なんでも人のせいになる
ミスが起きた。
本来なら、まず見るのはそこだった。
どこで手順が抜けたのか。
誰が何を見落としたのか。
次に同じことが起きないようにするには、どこを直せばいいのか。
最初は、その話をする流れだったはずなのに、少し話し始めると向きが変わる。
「いや、それさ、その前の共有が曖昧だったし」
「でもあのとき時間なくて」
「そもそもあれ先に言われてなかったよね」
「それ○○さんにも言ってよ」
一つずつ聞くと、まったく筋が通っていないわけではない。
でも、その話が続くほど、最初に見ていたはずのミスが脇に押される。
確認したかったことより先に、周辺事情の説明が広がっていく。
気づくと「今回のミスをどう見るか」ではなく、
「誰のせいをどこまで薄められるか」みたいな空気になる。
なんでも人のせいになる。
そこにいるのが、小人【ナスリツケーン】である。
人を責める前に、会話の中で何が起きているのかを見てみる。
Punchline
ナスリツケーンは、
自分の関わったミスを、他の原因の話に置き換える小人。
全部を嘘に変えるのではなく、話の中心を少しずつ横へずらしていく
今回の小人:ナスリツケーン
ナスリツケーンは、問題が起きたあとに出てくる。
作業中より、指摘された直後や確認の場で動きやすい。
「知らない」と突っぱねるタイプではない。
状況の話もする。
周りの影響も拾う。
自分なりの説明もすぐ出す。
ただ、その説明の出し方に特徴がある。
ミスを確認する話だったのに、
「でもあのとき急いでたし」
「先にあれが決まってなかったし」
「自分だけの問題じゃないでしょ」
と、次々に別の原因を横に並べる。
主食:「いや、それさ」「でも」
得意技:自分の関わったミスを他の原因の話に置き換える
一言で逃げるのではなく、別の理由を足して中心をずらしていく
何が起きているか
ナスリツケーンでめんどくさいのは、反論されることそのものではない。
ミスを確認する話が、途中から周りの事情説明に置き換わることにある。
- ミスの話をしていたのに、途中から別の人の話になる
- 確認しようとすると「でもあれがあって」と話がずれる
- 気づいたら“このミスどうする?”の話が止まる
- 結局、その場では何を直すか決まらない
たとえば、
「この入力、ここ抜けてたよね」と確認したかったのに、
「その前に資料の形式が違ってて」
「しかも直前で変更入ったし」
「○○さんの返事も遅かったから」
と話が広がる。
一つずつ聞くと、たしかに関係はある。
だから途中で切りにくい。
でも、その説明を全部拾っているうちに、最初の確認が進まない。
苦しいのは、責任を押しつけられることだけではない。
確認の場が、確認の場として機能しなくなることである。
話したのに進まない。
見たのに定まらない。
そこがじわじわ疲れる。
しんどいのは反論より、今回のミスの確認が後ろへ回ること
ナスリツケーンが出る瞬間
ナスリツケーンは、ただ人を悪者にしたいから出てくるわけではない。
多くの場合、先に動いているのはこの感覚である。
ナスリツケーンの心の声:
「ここでそのまま認めたら、自分が全部悪いことになりそう」
この感覚が出ると、人は確認より先に防御へ寄りやすい。
指摘された内容を受け取る前に、先に不利を薄めたくなる。
そこで出てくるのが、周辺事情の追加である。
その場で起きていること
- ミスを指摘される
- そのまま受けると不利になりそうで身構える
- 今回の話より先に、周辺事情を足す
- 他の人や前提条件の話を混ぜる
- 焦点が散り、自分の関わった部分がその場で確定しにくくなる
なぜそうなるのか
- 認めた瞬間に責任が確定しそうで怖い
- 悪く見られる前に印象を薄めたい
- 周辺事情にも実際の原因が混ざっている
- 話を広げると、その場の確定を止めやすい
ここで重要なのは、ナスリツケーンが全部でたらめを言うわけではないという点である。
本当に周辺事情があることも多い。
だから話が通ってしまう。
だから確認の場が流されやすい。
事実を消すのではなく、今回のミスと周辺事情を同じ場に並べて中心をぼかしていく
それでも原因は一つじゃない
もちろん、原因は一つとは限らない。
現場には前提の不足もある。
共有漏れもある。
段取りの粗さもある。
タイミングの悪さもある。
- 状況にも原因はある
- 他の人の動きも影響する
- 前提の共有不足も起きる
- 一人だけで発生するミスとは限らない
ただ、ここで分けて見たいことがある。
原因が複数あることと、今回のミスの確認が進まないことは同じではない。
周辺事情を整理するのは、そのあとでもできる。
先に今回のミスを見る。
そのあとで周辺事情を見る。
この順番が崩れると、話し合いの形は整っていても、中身は前に進まない。
相手がナスリツケーンのとき
相手がナスリツケーンのとき、効きやすいのは言い負かすことではない。
話の範囲を“このミス”に固定することである。
話し方を変える
- 広がった話を全部回収しない:事情を一つずつさばき始めると中心が戻らない
- 今回の話題を言い直す:今見たい範囲を言葉にして固定する
- 人格評価まで進めない:「また人のせいにしてる」で感情戦にしない
- 確認の順番を守る:周辺事情の前に、今回のミスを見る
戻しテンプレ
①「その事情もあると思う。まず今回のミスだけ確認させて」
②「周りの話はあとで見るとして、この抜けはどこで起きた?」
③「いったん範囲を絞りたい。この件の手順だけ見よう」
正しさをぶつけるより、会話の中心を戻す
あなたはどこでしんどくなる?
同じナスリツケーンでも、しんどくなるポイントは人によって違う。
いちばん近いものを選ぶ。
-
① 話を戻したいのに、毎回まわりくどくなって進まない
→ 話題回収型 -
② いろいろ言われると、その場で何が問題だったのか見失う
→ 論点拡散型 -
③ 一応聞くけれど、結局また同じ流れになって消耗する
→ 繰り返し消耗型
自分がどこで削られやすいかを見ると、関わり方を決めやすくなる
自分がナスリツケーンのとき
自分の中にもナスリツケーンはいる。
指摘された瞬間に、別の理由を言いたくなることは珍しくない。
「でも急いでたし」
「先に聞いてなかったし」
「自分だけの問題じゃないし」
こういう言葉が先に出そうになるときは、たいてい責められる構えが先に立っている。
その場で全部背負わされる気がして、先に薄めたくなる。
自分がどれだけ悪いかを先に決めなくていい。先に見るのは、今回どこでミスが起きたかだけでいい。
たとえば、
「先に今回のミスだけ確認するね」
「周りの事情はあとで話すとして、まず自分の抜けを整理する」
「言い分はあるけど、その前に今回の確認をする」
と言えるだけで、会話の質はかなり変わる。
周辺事情を話すこと自体は悪くない。
先に今回のミスを見る。
その順番を守るだけで、ナスリツケーンはかなり小さくなる。
境界線
仕組みを知ると、少し冷静にはなれる。
ただし、毎回ナスリツケーンが出て、確認の場が流されるなら、関わり方は変えた方がいい。
- 話すたびに周辺事情ばかり増える
- 確認しようとしても今回の話に戻らない
- 毎回うやむやのまま終わる
- 次も同じ種類のミスが起きる
ここまで続くなら、丁寧に付き合い続けるほど消耗しやすい。
必要なのは、説得ではなく運用の調整である。
確認項目を分ける。
記録を残す。
会話を短くする。
その場で広げず、論点ごとに区切る。
ナスリツケーン相手には、長い話し合いより、
確認の単位を小さくする方が効きやすい。
まとめ
なんでも人のせいになる。
その正体は、
自分の関わったミスを、他の原因の話に置き換えていく小人【ナスリツケーン】である。
周辺事情があること自体はおかしくない。
ただ、それが先に出るたびに、今回のミスの確認が後ろへ回る。
その結果、話したのに進まない。
見たのに定まらない。
同じことがまた起きる。
ナスリツケーン対策チェック
- 広がった話を全部回収しない
- 今回の話題を言い直す
- 話の範囲を“このミス”に固定する
- 人格評価まで進めない
- 確認の順番を守る
今日の小人(ミニ図鑑)
小人:ナスリツケーン
種類:責任転嫁型
出現:ミス/確認の場/注意された直後
口ぐせ:「いや、それさ」
今回のミスを見ようとしたのに、気づくと他の原因の話になっている。
それがナスリツケーン。


